パテック フィリップのカラトラバは、丸いケースと端正な文字盤で知られるコレクションです。しかし、「カラトラバなら手巻き」「日付のない時計」と一括りにはできません。丸形の外観の中に、巻き上げ方式や秒表示、装飾の異なるモデルがあります。
この記事では、1932年のRef.96を出発点に、公式掲載の6119G-001と5226G-001を比較します。写真や仕様表のどこを見ると違いが分かるかを、表示、ケース、機械の順に整理します。
1932年のRef.96から続く、丸形時計のコレクション
公式のコレクション紹介によれば、カラトラバは1932年のRef.96から始まりました。初期デザインについては、機能が形を決めるというバウハウスの考え方からの影響が説明されています。出典:パテック フィリップ・カラトラバ
この背景を知ると、文字盤の余白や針・目盛りの配置を、単に装飾が少ないという見方から一歩進めて楽しめます。時刻を読むために何を残し、どこに置いたか。丸い輪郭の中で、表示をどう整えているかに注目してみてください。
一方、コレクションは長い歴史の中で展開を広げています。1932年の出発点を知ることと、後年の製品をすべて同じ仕様として扱うことは別です。現行の掲載例を見る際も、個別の型番から機能を確認します。
6119G――小秒針と、ベゼルのクルー・ド・パリ
6119G-001はホワイトゴールド製の39mmケースに、6時位置の小秒針を備える手巻きモデルです。チャコールグレーの文字盤には縦方向のサテン仕上げがあり、ベゼルにはクルー・ド・パリと呼ばれる細かな鋲状の模様を施しています。出典:公式・6119G-001
小秒針は、中央の時針・分針とは離れた場所で通常の秒を示すものです。小さな表示があることだけを理由に、ストップウォッチ機能付きとは判断できません。このモデルでは、日付窓のない文字盤の中で、時・分と秒が異なる場所に配置されています。
公式写真を見る際は、文字盤の平面、立体的な時刻の目盛り、ベゼルの模様を順番に追うと、装飾の役割を整理できます。細かな模様がある場所と、余白を残した場所との組み合わせが見どころです。
30-255 PS――手巻きと二つの香箱
6119用に2021年に発表された30-255 PSは、手巻きの薄型ムーブメントです。公式の機械解説では直径31mm、厚さ2.55mmとされ、二つの香箱によって最低65時間のパワーリザーブを確保しています。香箱は、動力となるぜんまいを収める部分です。出典:公式・30-255 PS
ここで注意したいのは、機械の厚さ2.55mmと、完成した時計の厚さ8.08mmは測る対象が違うことです。ケースには文字盤、針、風防、裏蓋なども組み合わさるため、機械の数値を時計全体の寸法として読まないようにします。
手巻きでは、使用に合わせてリューズからぜんまいを巻き上げます。パワーリザーブは動力がどのくらい持続するかを示す仕様であり、日々の進み・遅れを示す精度とは異なる項目です。
二つの香箱は、持続時間だけの工夫ではない
30-255 PSの二つの香箱は、公式が「並列」と説明する配置です。メーカーの解説記事では、二つが同時に中央のピニオンとかみ合い、持続時間に加えて機械を動かすトルクも確保する構成とされています。香箱の数を見て、一本のぜんまいの持続時間を単純に2倍にした機械だと考えると、設計の狙いを見落とします。公式マガジン・6119と30-255 PSの解説
同じ資料は、六つの受けで主要な部品を支える構造や、受けに施した帯状の装飾、面取りして磨いた縁も紹介しています。裏蓋越しに見る際は、大きな部品の配置を先に追い、その後で平面と縁の光り方を見分けると、機械の構造と仕上げを一緒に楽しめます。文字盤の表示が少ないことと、機械の設計や装飾に見るところが少ないことは同じではありません。
5226G――中央の秒針、日付、自動巻き
5226G-001では、通常の秒を中央の針で示し、日付窓も備えます。機械は自動巻き26-330 S C。公式説明には、時刻合わせの際に秒針を止める機能も記載されています。出典:公式・5226G-001
文字盤は粒状の質感を持ち、外周に向かって黒くなるチャコールグレーです。ケースはホワイトゴールド製40mm。クルー・ド・パリは、6119のベゼルではなく、ケース側面の周囲に施されています。同じ装飾名でも、その位置によって時計の見え方が変わります。
自動巻き機械の裏側を見る際には、巻き上げに関わる回転錘も観察の対象になります。6119の手巻き機械と比較するときは、部品の数の多さだけでなく、巻き上げ方式の違いが配置にどう表れるかを見てみると面白さが広がります。
6119は面の光、5226は粒状の質感を観察する
6119Gの時刻の目盛りには面を持つ立体的な形が使われ、時分針は先のとがったドーフィン型です。縦方向に仕上げた文字盤の上で、針や目盛りの面がどのように浮かぶかが観察のポイントになります。ベゼルの細かな模様へ目を移すと、中央に残した余白との密度の違いも分かります。6119G・針と文字盤の公式説明
5226Gでは、メーカーが古いカメラの外装を着想源として挙げる粒状の文字盤が主役です。ベージュの夜光を用いたアラビア数字と針が、チャコールグレーの表面に重なります。古い道具を連想させる意匠ですが、文字盤が経年変化したヴィンテージ個体という意味ではありません。現代の型番として作られた質感を楽しむ時計です。5226G・文字盤の着想と仕上げ
二つを比べるときは、正面の写真だけでなくケースの側面も見たいところです。6119のクルー・ド・パリは文字盤を囲む縁にあり、5226ではケースの横に回り込みます。同じ模様を共有していても、正面から強く見せるのか、角度を変えたときに現れるのかという違いが、丸い時計の性格を変えています。
巻き上げ方式は、使う間隔と裏側の見え方につながる
5226Gの26-330 S Cには21Kゴールド製の中央ローターが使われています。手巻きの6119Gと裏側を比べるなら、まずこの大きな回転部品の有無を見ます。手巻きでは受けや歯車の配置を、こちらではローターとその奥の機械を観察することになり、巻上げ方式の違いが視覚的な楽しみにもつながります。
使う場面では、毎日手で巻く時間を取りたいか、腕に着けることで動力を補いたいかが選ぶ軸になります。ただし、自動巻きも着用時間や腕の動きが少なければ、十分に巻き上がるとは限りません。また、6119の最低65時間と5226の35〜45時間は満巻き時の持続時間の仕様です。何曜日に必ず止まるという約束ではなく、時計を外しておく間隔を考える手がかりとして読みます。
代表2仕様を、同じ項目で比べる
以下は確認日時点の公式掲載仕様です。カラトラバ全体を代表する共通仕様ではありません。
| 比較項目 | 6119G-001 | 5226G-001 |
|---|---|---|
| ケース素材 | ホワイトゴールド | ホワイトゴールド |
| ケース径 | 39mm | 40mm |
| ケース厚 | 8.08mm | 8.53mm |
| 巻き上げ方式 | 手巻き | 自動巻き |
| キャリバー | 30-255 PS | 26-330 S C |
| 通常の秒表示 | 6時位置の小秒針 | 中央の秒針 |
| 日付表示 | なし | 窓表示 |
| 公称パワーリザーブ | 最低65時間 | 最低35時間〜最大45時間 |
| クルー・ド・パリの位置 | ベゼル | ケース側面 |
| 裏蓋 | サファイアクリスタル | サファイアクリスタル |
出典:6119G-001の公式仕様、5226G-001の公式仕様。
5226の持続時間は「最大45時間」だけを抜き出さず、公式の最低・最大の表記を残しました。数字をそろえて読むことで、異なる条件の説明を同じ意味として比較するのを避けられます。
39mmと40mmという差だけでは、腕に着けた印象は決まりません。ケースの形、厚さ、文字盤の配置、ストラップも関わります。比較表で機能の違いを整理したうえで、実物を見る機会には、腕を動かした際の読み取りやすさや収まりを確かめるとよいでしょう。
本文で扱うモデルの基準価格
価格確認日:2026年10月4日。型番を指定した日本向け公式掲載額です。中古販売価格・買取価格とは区別しています。
| 対象・仕様 | 価格 | 区分・出典 |
|---|---|---|
| 6119G-001 カラトラバ・ホワイトゴールド・手巻き | 6,110,000円 | 日本公式掲載価格(税区分未確認) 価格の出典 |
| 5226G-001 カラトラバ・ホワイトゴールド・自動巻き | 7,690,000円 | 日本公式掲載価格(税区分未確認) 価格の出典 |
日本向け公式掲載額を採用し、取得価格欄で税区分を確認できないため税込・税別は断定していません。二つともホワイトゴールドですが、巻き上げ方式、日付の有無、秒表示、外装の仕上げが異なります。価格差を自動巻き機構だけの追加料金と考えず、型番ごとの仕様全体を見てください。
価格・在庫・受付条件は変わることがあります。購入や依頼の際は、対象の仕様と最新の支払総額をご確認ください。
ストラップまで見ると、装いの方向性が分かる
6119Gの公式仕様は、光沢のある黒いアリゲーターストラップを挙げています。5226Gには、ベージュのヌバック仕上げと、布目の型押しを施した黒のカーフストラップが案内されています。ケース素材はどちらもホワイトゴールドですが、革の光沢や色の組み合わせまで見ると、二つの時計の表情を具体的に比較できます。
購入候補の写真では、文字盤だけを拡大するより、ストラップを含む全体像と横顔も並べると選びやすくなります。中古の場合は掲載時の純正構成と現在の付属品を分け、革の状態やバックルも確認します。気に入った文字盤の印象を、実際に腕に着ける一本へつなげるための見方です。
型番から、自分が惹かれる理由を整理する
6119の小秒針とベゼルの模様に惹かれるのか、5226の中央秒針や日付、文字盤の質感が好みなのか。まずは具体的な部分を言葉にすると、「シンプルな丸形時計」という印象の中にある違いが見えてきます。
そのうえで型番、機械、寸法を控えれば、別の素材や世代を調べる際にも比較の軸を保てます。モデルへの好みと、販売されている一本の状態・整備履歴は、別々に確認するのが基本です。
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情報確認日:2026年10月4日。公式資料に基づく解説で、実機の使用レビューではありません。公式掲載は販売店の在庫や購入可能性を示すものではありません。
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小秒針と文字盤の余白を読み比べるなら、ノモス タンジェントの歴史も参考になります。同じ35mm径の手巻きと自動巻きを、寸法と機械から比較しています。

