八角形のベゼル、表から見えるビス、ケースから続くブレスレット。オーデマ ピゲのロイヤル オークは、輪郭を見ただけでも印象に残る時計です。ただし、同じ名前を持つモデルの大きさや機械は一種類ではありません。
この記事では、1972年の初代5402を出発点に、「ジャンボ」という呼び名、後年の自動巻きモデル、オフショアの位置付けを整理します。
アイキャッチの実物写真:ロイヤル オーク(投稿者の表記は「Jumbo 15202」)。撮影:section215、写真内表記 © AS/Audemars Piguet Royal Oak Jumbo 15202(Flickr)、CC BY 2.0。既存掲載画像を追加加工せず再利用。個体の年式・型番を独立鑑定したものではなく、本文の5402・16202・15510を写した写真ではありません。
1972年、ステンレススティールの5402から始まった
初代ロイヤル オーク5402は、ジェラルド・ジェンタのデザインをもとに、1972年のバーゼル・フェアで発表されました。公式アーカイブには、ステンレススティール製39mmケースとキャリバー2121を備える初期個体が記録されています。出典:AP Chronicles・5402
高級時計の外装を見る際、貴金属かどうかは分かりやすい判断材料です。しかしロイヤル オークでは、ケースとブレスレットの形、面の仕上げ、薄型の機械を組み合わせた構成にも目を向ける必要があります。素材名だけでは説明しきれない部分が、この時計を理解する入口になります。
八角形とビスを、構造とデザインの両方から見る
ベゼルの八角形と8本のビスは、ロイヤル オークの外観を特徴付ける要素です。公式の誕生史は、防水のための構造やジェンタの回想を紹介するとともに、よく語られる軍艦の砲門との形の類似については慎重な見方を示しています。「名前の由来」と「形の着想」を、一つの物語として結び付けすぎないことが大切です。出典:AP Chronicles・誕生の記録
写真では、まずベゼルの輪郭を追い、その外側のケース、さらにブレスレットへと視線を移してみてください。角のある部分と、光を柔らかく返す面の配置を分けて見ると、時計全体のつながりをつかみやすくなります。八角形だけを切り取って見るより、腕を囲む形として眺める方が、このデザインの特徴を読み取れます。
ブレスレットの細くなる形と、面の光を追う
公式のブレスレット史は、ケースから留め具へ向かって幅が細くなる形と、サテン仕上げの面、明るく光る面取り部分の組み合わせを説明しています。ケースだけを豪華にしてベルトを付けたのではなく、腕を囲む部分まで一続きの造形として考えられた時計です。出典:AP Chronicles・ブレスレットの構造と仕上げ
見比べる際は、ケースに近い幅広いコマから、留め具へ向かう幅の変化を追ってみてください。次に、広い面の柔らかな反射と、縁の細い光の線を分けて見ます。腕の角度で明暗のつながりが変わるところに、スティール製であっても表面の作り込みを楽しめる理由があります。
タペストリーは、四角を並べただけの模様ではない
プチタペストリーの公式解説では、小さな角錐の頂点を切ったような立体と、その間の微細な模様が紹介されています。大きな原型をなぞり、動きを縮小して文字盤に彫る仕組みを使うため、表面には凹凸が生まれます。色に加えて光を受ける面が細かく分かれることが、この文字盤の表情につながります。出典:AP Chronicles・タペストリーの加工
16202のプチタペストリーと15510のグランドタペストリーを見るときは、青の色名だけでなく、ひとつひとつの模様の大きさと針・目盛りとの関係も比べます。同じ距離から時計全体を眺めた後、拡大写真で凹凸を追うと、遠目の印象と細部の仕事を結び付けられます。模様の大小を、そのまま仕上げの優劣と考える必要はありません。
「ジャンボ」は、いちばん大きいモデルという意味ではない
公式アーカイブでは、ロイヤル オークの「ジャンボ」は39mmの薄型モデルに用いられてきた呼称として説明されています。現在の感覚で最大サイズを指す言葉と読むと、41mmのモデルとの関係が分かりにくくなります。出典:AP Chronicles・ジャンボの系譜
主な系譜をたどると、5402(1972年)、14802(1992年)、15002(1996年)、15202(2000年)、16202(2022年)という節目があります。これは代表的な世代を整理したもので、素材違いや派生モデルをすべて列挙した年表ではありません。
アイキャッチの投稿者が示す15202もこの系譜に含まれます。ただし、一枚の写真から裏側の機械や製造年まで確認できるわけではありません。外観の参考写真と、公式資料で確認するモデルの仕様を分けて読む必要があります。
16202では、外観の継承と機械の更新が両立する
2022年の16202で大きく変わったのは内部の機械です。それまでの2121に代わり、キャリバー7121を採用しました。2022年の公式アーカイブで紹介された7121のパワーリザーブは55時間です。現在の製品ページにある52時間とは表記が異なるため、発表時の資料と型番別の掲載仕様を分けて紹介します。出典:AP Chronicles・キャリバー2120/2121と後継機 また、16202では日付の早送り機構も導入されています。出典:AP Chronicles・16202への更新
現在の公式掲載例16202ST.OO.1240ST.02は、スティールの外装と「プチタペストリー」文字盤、自動巻き7121の組み合わせです。出典:公式・16202ST.OO.1240ST.02
旧世代と似た顔を持つことは、機械まで同じであることを意味しません。時計の世代を比べるときは、文字盤やケースに加え、キャリバーと機能の変更点を照合すると、見た目だけでは分からない違いが見えてきます。
39mmのジャンボと41mmの自動巻きを分ける
比較例として、公式掲載の15510ST.OO.1320ST.06は41mmの自動巻きモデルで、「グランドタペストリー」文字盤と説明されています。16202STの「プチタペストリー」とは、文字盤模様の呼び方も異なります。出典:公式・15510ST.OO.1320ST.06
| 見る項目 | ジャンボの例:16202ST | 自動巻きの例:15510ST |
|---|---|---|
| 比較する掲載番号 | 16202ST.OO.1240ST.02 | 15510ST.OO.1320ST.06 |
| ケース径 | 39mm | 41mm |
| 文字盤の模様 | プチタペストリー | グランドタペストリー |
| ケース厚 | 8.1mm | 10.5mm |
| キャリバー | 7121 | 4302 |
| 通常の秒針 | なし | 中央秒針 |
| 製品ページのパワーリザーブ | 52時間 | 70時間 |
| 読み方のポイント | 初代から続く薄型の系譜 | 別のサイズ・設計として比較する |
ケース径の出典はジャンボの公式系譜と上記15510STの公式ページ、文字盤は各掲載番号の公式説明です。2仕様の比較であり、ロイヤル オーク全体の仕様表ではありません。
「自動巻き」は巻き上げ方式を表し、ジャンボの16202も自動巻きです。したがって、ジャンボと自動巻きを互いに排他的な機械の分類として扱わず、商品名やサイズ、型番と合わせて読むと整理できます。
秒針と厚さまで見ると、二つの自動巻きの違いが明確になる
16202STの公式機能欄は時・分・日付で、秒針を持たない構成です。15510STには中央の秒針があり、キャリバー4302を搭載します。時刻を確認するときの静かな二針の顔が好みか、秒針の動きも眺めたいか。どちらも自動巻きですが、文字盤から受け取る印象はここでも変わります。
ケース厚は16202STが8.1mm、15510STが10.5mmです。直径の2mm差だけでなく、厚さにも2.4mmの違いがあります。ジャンボの薄型という言葉は、このように完成した時計の寸法でも確認できます。一方、機械の厚さはそれぞれ3.2mmと4.9mmで、ケース全体とは別の数値です。16202STの公式仕様/15510STの公式仕様
今回取得した製品仕様のパワーリザーブは、16202STが52時間、15510STが70時間です。薄さを重視した設計と、中央秒針を備える41mmの設計を、持続時間だけで順位付けせずに見比べたいところです。長く外しておく使い方と、袖口での収まりのどちらを重視するかでも、自分に合う一本は変わります。
中古個体なら、ブレスレットの長さと余りコマ、ケースやコマの面の状態、整備記録を合わせて確認します。外装を磨いた履歴は、傷の有無だけでなく、面の境界がどのように見えるかを考える材料です。一枚の写真だけで研磨の有無や真贋を決めず、販売店の説明と実物の状態を照合します。
オフショアは、1993年に始まった別の展開
ロイヤル オーク オフショアは1993年に登場しました。公式の回顧資料は、エマニュエル・ギュエによる42mmのクロノグラフと、リューズやプッシュボタンに用いたラバーなどを特徴として紹介しています。八角形の輪郭を受け継ぎながら、ボリュームと機能の表現を変えた展開です。出典:オーデマ ピゲ・50年のデザイン史
この42mmという数値は登場時の説明であり、すべてのオフショアのサイズではありません。また、ロイヤル オークの歴史にはクオーツや複雑機構のモデルもあります。初代の特徴を、そのまま全コレクションに当てはめないことが、モデル選びの基本になります。
あわせて読みたい
- オーデマ ピゲの資産価値:モデル・個体条件と価格を整理する。
- 時計の発売当初の価格と生産数:限定計画と後年の生産記録を読み分ける。
- 時計の番号と販売方法:型番を末尾まで確認する意味を知る。
情報確認日:2026年10月5日。公式アーカイブと商品説明に基づく解説です。在庫・受注可否や個体の鑑定結果を示すものではありません。
あわせて読みたい:パテック フィリップ ノーチラスの歴史|3700・5711から50周年の5810へ
薄型設計と一体感のある外装を比較するなら、ブルガリ オクト フィニッシモの解説も参考になります。40mmと37mmを品番別に比較しています。
1970年代を起点とする時計の歩みは、ジラール・ペルゴ ロレアートの歴史でも紹介しています。クォーツの起源と現代の自動巻きモデルを分けて読めます。
公式アーカイブで確認できる発売当時の価格
価格確認日:2026年10月5日。ここでは現在の定価ではなく、オーデマ ピゲの公式アーカイブが記録する1972年の価格を示します。
| 対象・仕様 | 価格 | 区分・出典 |
|---|---|---|
| ロイヤル オーク 5402 1972年のスティール製モデル | CHF 3,300 | 公式アーカイブに記載された当時価格(税区分未確認) 価格の出典 |
本文で紹介した初代5402の歴史的な価格記録です。16202STや15510STの現在の価格ではありません。 CHFはスイスフランです。元資料のこの記載では税区分を確定できていません。現在の為替で円換算した額を当時の国内定価としたり、別世代の現行価格と比べて投資収益率を計算したりしないでください。
価格・在庫・受付条件は変わることがあります。購入や依頼の際は、対象の仕様と最新の支払総額をご確認ください。

