ヨットマスターIIは、ヨットレースのスタートまでに残された時間を読むための時計です。計測を始めるだけでなく、途中の合図に合わせて表示を修正できる点に特徴があります。2026年には新世代が登場し、カウントダウンの設定方法と表示が変わりました。
本稿では旧世代の説明書と2026年の公式資料を分け、機構の目的と変更点を整理します。資料・公式掲載仕様の確認日:2026年10月8日(価格の確認日は価格欄に別記)。

レースの開始前に使うクロノグラフ
ヨットマスターIIの初登場は2007年です。2026年の新作も、レガッタのスタートを助けるという目的を受け継ぎます。ロレックス・2026年発表資料
通常のクロノグラフで「始めてから何分たったか」を読む場面に対し、このモデルで重視されるのは「スタートまであと何分か」です。設定した時間を機械が記憶する機能と、計測中に合図へ合わせ直す機能を組み合わせています。ロレックス・機能の概要
たとえば開始の合図に対してボタンを押すのが少し遅れた場合、そのずれを抱えたまま最後まで数えると、表示する残り時間もずれます。途中の合図で修正する仕組みは、この問題に対応するものです。これは用途を説明する例で、競技規則やすべての大会の進行を示すものではありません。
現在時刻・残り時間・経過時間を分けて読む
ヨットマスターIIには、同じ「時間」でも用途の異なる表示があります。中央の通常の時針・分針と6時位置の小秒針は現在時刻、カウントダウンの針はスタートまでの残り時間を示します。2026年モデルの回転ベゼルは、通常の分針と組み合わせて経過時間を読むためにも使えます。126680・表示機能と回転ベゼル
たとえば時計が10時を示す場面で、レース開始まで5分という残り時間を設定しても、時計の時刻を10時5分に進める操作ではありません。時刻表示とカウントダウンを分けて考えると、大きな中央針が止まっていても、小秒針で通常の時計が動いていることを確認できる理由が分かります。
旧世代はベゼルが設定機構の一部
参照した旧世代の公式説明書では、1〜10分のカウントダウンを設定できます。リングコマンドと呼ぶ回転ベゼルが、設定への切り替えと固定を担います。
設定時には計測を停止し、ベゼルと下側プッシャーを操作したうえで、リューズで分数を選びます。最後にベゼルとリューズを元に戻す構成です。外周のリングは、目盛りを眺めるためだけの部品ではありません。旧世代の公式説明書・印刷頁6〜7、14〜15
掲載写真では、文字盤内の弧状の10〜0の目盛りと、青いベゼル上の大きな数字が見えます。新世代と見比べるときは、青と白という配色よりも、目盛りの位置と役割に注目すると違いが分かります。
2026年は二つのプッシャーで設定・操作する
2026年モデルは、カウントダウンの設定と操作を側面の二つのプッシャーで行います。設定分数を選ぶためにリングコマンドを使う旧世代とは操作系が異なります。
下側のプッシャーで分数を設定し、上側で開始します。作動中に下側を押すと、カウントダウン秒針がゼロに戻り、離すと再び動きます。同時に分表示も最も近い分へ補正されるため、早過ぎた開始と遅過ぎた開始の両方を修正できます。ロレックス・新世代のカウントダウン操作
また、新世代ではカウントダウンの分針と秒針が反時計回りに動きます。分針はゼロで止まりますが、中央のカウントダウン秒針は動き続け、上側のプッシャーで停止します。「残り時間がゼロになればすべての針が止まる」という理解は正確ではありません。ロレックス・表示と終了時の動作
ここで述べているのは機能の概要です。実機の操作では、その個体の世代に対応した説明書で、停止・リセットなどの前提状態を含めて手順を確認します。
機械が記憶するのは、最初に選んだ分数
2026年モデルの機械式メモリーは、設定したカウントダウン時間を保持します。公式説明では、計測を停止してリセットすると、秒針はゼロ、分針は前回設定した分数へ戻ります。同じ長さのカウントダウンを繰り返す際に、その都度分数を選び直さずに済む仕組みです。ロレックス・設定分数の記憶と復帰
5分に設定した例なら、次の計測のために戻る位置は5分です。一方、作動中の同期は、レース側の途中の合図に現在の残り時間を合わせる操作です。「最初の設定へ戻すこと」と「進行中のずれを合わせること」は目的が異なり、どちらも同じリセットとして説明すると、この時計の特徴が見えにくくなります。
ベゼルと文字盤の役割を読み分ける
新世代のカウントダウン目盛りは文字盤外周のフランジに配置され、10〜0分と、その間の半分の分を示します。文字盤には反射を抑えた白いマットラッカーを採用しています。126680・文字盤の構成
一方、外側の青いセラミックベゼルは、両方向へ回る60分目盛りです。たとえばブイ間の航走時間を読む用途があり、旧世代の設定用ベゼルから役割が変わっています。126680・ベゼルの用途
| 見る部分 | 参照した旧世代 | 2026年モデル |
|---|---|---|
| 設定の入口 | リングコマンドベゼル | 側面のプッシャー |
| 分数の設定 | リューズを使う | 下側プッシャーを使う |
| 残り分の目盛り | 文字盤内の弧状の目盛り | 外周フランジの10〜0分 |
| ベゼルの主な役割 | 設定への切り替え・固定 | 60分目盛りによる時間の計測 |
旧世代の欄は上記説明書と参考写真、新世代の欄は2026年発表資料・126680公式仕様に基づきます。旧型すべての文字盤や針の形状を一括した比較ではありません。
最後の30秒には、ベゼルの目盛りを秒として使う
2026年の公式資料には、最後の1分のうち残り30秒を、反時計回りのカウントダウン秒針とベゼルの細かな目盛りで読む方法が示されています。この場合は、あらかじめベゼルの三角を12時位置に合わせます。通常は分として使う前半の目盛りを、この読み方では秒として扱う点が特徴です。ロレックス・最後の30秒の読み取り
したがって、ベゼル上の同じ数値でも、通常の分針との組み合わせなのか、カウントダウン秒針との組み合わせなのかで単位が変わります。スタート直前の場面では「どの針を見るか」「ベゼルが基準位置か」をそろえて読む必要があります。旧世代のリングコマンドの使い方へ、この新世代の読み方をそのまま当てはめることはできません。
機械は4162へ、現行掲載は二つの素材
2026年の機械はキャリバー4162です。ロレックスは、前世代に搭載された4161を発展させ、カウントダウン機構を見直したものと説明しています。クロナジー脱進機も採用しました。ただし、この説明から「2007年以降の旧型はすべて4161」とは言えません。初期型を含む搭載機械の全移行表は、本稿の確認範囲外です。ロレックス・4162の位置付け
| 比較項目 | オイスタースチール | イエローゴールド |
|---|---|---|
| 公式掲載仕様 | m126680-0001 | m126688-0001 |
| ケース径 | 44mm | 44mm |
| ケース・ブレスレット | オイスタースチール | 18ctイエローゴールド |
| 文字盤 | ホワイト | ホワイト |
| 機械 | 4162、自動巻き | 4162、自動巻き |
| 公称パワーリザーブ | 約72時間 | 約72時間 |
| 公称防水 | 100m | 100m |
| 帯・留め具 | オイスター/オイスターロック | オイスター/オイスターロック |
| 長さの調整 | イージーリンク約5mm | イージーリンク約5mm |
出典:126680公式仕様、126688公式仕様。確認日時点の掲載仕様を比較しています。
両仕様とも時刻表示の秒針は6時位置の小秒針です。中央のカウントダウン秒針とは役割が異なります。計測が停止していても時計そのものが止まっているとは限らないため、写真や実機ではどの針を見ているかを分けます。126688・表示機能
仕様別の国内希望小売価格
価格確認日:2026年9月28日。ロレックス公式の日本向け価格情報で確認した税込額です。各リンクの末尾番号まで含めた仕様に対応します。
| 対象・仕様 | 価格 | 区分・出典 |
|---|---|---|
| 126680-0001 44 mm/オイスタースチール/ホワイト/オイスター(3列リンク) | 3,005,200円 | 国内希望小売価格(税込・ロレックス公式) 価格の出典 |
| 126688-0001 44 mm/18 ct イエローゴールド/ホワイト/オイスター(3列リンク) | 9,007,900円 | 国内希望小売価格(税込・ロレックス公式) 価格の出典 |
2026年の現行世代126680・126688の価格です。旧世代116680・116688の中古相場や発売時価格ではありません。商品名にIIが付く点だけでなく、型番と操作機構の世代をそろえて比較してください。 公式掲載価格は、店頭在庫や購入機会、中古の成約額・買取額を保証するものではありません。
価格・在庫・受付条件は変わることがあります。購入や依頼の際は、対象の仕様と最新の支払総額をご確認ください。
通常のヨットマスターと比較するとき
通常のヨットマスターについては、別記事でサイズ・素材・ベゼルを整理しています。IIという名称だけで単純な後継機と考えるより、カウントダウンという独自の用途から読むと、それぞれの構成が理解しやすくなります。
中古の旧世代と2026年モデルを比較する際も、まず型番と世代を確認し、次に表示と設定方法、最後に機械と素材を照合します。旧型番ごとの文字盤変更や機械の移行境界は、今後さらに資料をそろえて詳説する対象です。


