ブレゲ タイプ20とタイプXXの違い|1954年の歴史と、フライバック・積算計を読む

黒文字盤と二つの小さな表示を備えたブレゲの海軍航空隊向けタイプXX ブランド・モデル
海軍航空隊向けタイプXXの歴史資料写真(2016年撮影)。出典ではフランス国立海洋博物館所蔵の「Aéronautique navale」、シリアル3972として紹介されています。下表の現代モデル2057・2067とは異なります。 写真:Rama/Breguet Type XX watch Aéronautique navale-3972-IMG 6188(Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0 fr)。切り抜き・色変更なし。表示用に縮小・圧縮する場合があります。

ブレゲのタイプ20とタイプXXは、航空との関わりを持つクロノグラフです。名前はアラビア数字とローマ数字で似ていますが、2023年に発表された2057と2067では、文字盤の小さな計測表示にも違いがあります。

この記事では歴史の入口を押さえ、タイプ20の2057ST/92/SW0とタイプXXの2067ST/92/3WUを比較します。二つの時計が備えるフライバックも、通常の時刻表示や回転ベゼルとは分けて考えます。

1954年から続く、航空用クロノグラフの系譜

ブレゲの公式年表は1954年をタイプXXクロノグラフの量産開始の節目とし、フランスの航空分野との関わりや、その後の民間向けモデルへの展開を説明しています。ブレゲ公式・1954年の沿革

現代のタイプ20、2057の公式説明は、1955~1959年にフランス空軍へ納めた1,100本を着想源としています。この数字は過去の納入記録であり、現在の2057の限定本数ではありません。ブレゲ公式・2057ST/92/SW0

歴史上の軍用時計を参照していることと、現在の製品が軍に支給されていることも同じではありません。モデル紹介の「軍用」「民間用」は、まずデザインがどの系譜に結び付くかを読む言葉として扱うと理解しやすくなります。

20とXXを、すべての年代に共通する分類にしない

ブレゲの新世代紹介は、タイプ20の2057を軍用の系譜、タイプXXの2067を民間用の系譜に位置付けています。一方、同資料は過去の海軍航空隊向けモデルにもローマ数字のXX表記が使われたと説明しています。ブレゲ公式・新世代タイプXXの解説

したがって「20なら軍用、XXなら必ず民間用」というルールを全時代へ広げるのは適切ではありません。今回は2057と2067の比較として整理し、ヴィンテージ個体は当時の記録と型番を別に確認する必要があります。

黒文字盤と二つの小さな表示を備えたブレゲの海軍航空隊向けタイプXX
海軍航空隊向けタイプXXの歴史資料写真(2016年撮影)。出典ではフランス国立海洋博物館所蔵の「Aéronautique navale」、シリアル3972として紹介されています。下表の現代モデル2057・2067とは異なります。 写真:Rama/Breguet Type XX watch Aéronautique navale-3972-IMG 6188(Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0 fr)。切り抜き・色変更なし。表示用に縮小・圧縮する場合があります。

フライバックは、計測をやり直す操作をまとめる機能

フライバックは、計測中のクロノグラフをゼロに戻し、続けて新たな計測を始められる機能です。通常のクロノグラフで停止、リセット、再スタートと分かれる操作をまとめられます。2057と2067の両方に、この機能が備わります。出典は前述の公式新世代解説です。

例えば、ある区間を測り終えた瞬間から次の区間を測りたい場面を考えると、役割が分かりやすくなります。時刻を別のタイムゾーンへ切り替えたり、時計自体を巻き上げたりする機能ではありません。

また、複数の対象の途中時間を比較するスプリットセコンドとも異なります。名前が難しく感じられたら、「何を測り、どの操作を省く機構なのか」から考えると整理できます。

具体的には、最初の区間を2分20秒で終え、その地点から次の区間を測る場面を想像してください。フライバックなら、計測中に4時位置のボタンを操作して針をゼロへ戻し、次の計測へ移れます。前の2分20秒を記憶しておく機能ではないので、記録が必要なら別に残します。「前の時間を保存する」よりも「次の開始点をそろえる」ことに向く機能です。

普段の時刻を示す時針・分針は、この計測のやり直しとは別に進みます。飛行に限らず、連続する作業や練習の区間を測ると考えると、航空時計に受け継がれた操作の意味が身近になります。実際の操作は対象時計の説明書に従ってください。

2057と2067では、小さな計測表示の単位が違う

項目タイプ20 クロノグラフ2057タイプXX クロノグラフ2067
比較対象2057ST/92/SW02067ST/92/3WU
ケース素材・径スティール・42mmスティール・42mm
ケース厚14.1mm14.1mm
キャリバー7281・自動巻き728・自動巻き
3時位置30分積算計15分積算計
6時位置積算計なし12時間積算計
9時位置通常の秒表示通常の秒表示
パワーリザーブ60時間60時間
振動数5Hz5Hz
防水表記10bar10bar

出典:前述の公式2057仕様、公式2067ST/92/3WU仕様。

どちらも3時位置に分を積算する表示がありますが、一周の時間が異なります。写真の針の角度が同じでも、示している経過時間は同じとは限りません。色や小窓の数に加え、目盛りの数字まで読むことが重要です。

秒針が二つある理由と、積算計の読み方

両モデルの9時位置は、普段の時刻を刻むスモールセコンドです。中央の細長いクロノグラフ針は計測用で、通常の秒表示とは役割が違います。計測を止めたときに中央の針が静止していても、9時位置の秒針が進んでいれば、時計全体が停止したわけではありません。

2057の3時位置は30分で一周し、2067では15分で一周します。たとえばスタートから10分の時点なら、2057では一周の約3分の1、2067では約3分の2です。これは積算計の単位から計算した読み方の例で、同じ角度を同じ分数だと思い込まないための手がかりになります。

2067はさらに6時位置に12時間積算計を持つため、短い分の区間と、より長い経過時間を別々の表示で追えます。2057では二つの小表示に情報が絞られ、2067では三つに増える。単に文字盤が賑やかかどうかではなく、自分が測りたい長さと照らして選ぶ違いです。公式2067の表示解説

ベゼルとリューズにも、二つの系譜が表れる

2057はミントグリーンの夜光と、膨らみのある梨型のリューズを備えます。2067はアイボリー色の夜光と直線的なリューズを組み合わせます。さらに2057のベゼルには数字の目盛りがなく、2067には目盛りが刻まれています。軍用と民間用という説明を読んだ後で、実際に形の違いを探せる部分です。公式新世代紹介・2057と2067の外装

回転ベゼルは外周の目印を動かす部分で、クロノグラフは内部の機械によって経過時間を測る部分です。ベゼルを回すことと、プッシャーで計測を始めることは別の操作。外周、中央針、小表示の順に役割を分けると、航空時計らしい顔つきの中身が分かります。

比較する型番の基準価格

価格確認日:2026年10月4日。型番とベルト仕様を指定し、価格の出典を併記しています。

型番・仕様基準価格区分と出典
2057ST/92/SW0
タイプ20・42mm・スティールブレスレット
3,476,000円(税込)国内正規販売店HASSINの掲載参考価格
価格の掲載元
2067ST/92/3WU
タイプXX・42mm・カーフレザー
2,970,000円(税込)国内正規販売店HASSINの掲載参考価格
価格の掲載元

ブレゲの日本語公式ページは、2057ST/92/SW0、2067ST/92/3WUとも価格を販売店へ問い合わせるよう案内しています。そこで表には、国内正規販売店HASSINが掲載する金額を参考として示しました。メーカー公式サイトで金額を確認できた価格、発売時価格、中古相場とは区別しています。同店の両商品ページは確認時点で売り切れ表示のため、この金額で直ちに購入できることを示すものではありません。また、比較する2本はブレスレットと革ストラップの違いもあり、積算計やキャリバーだけの価格差ではありません。

価格や納期・在庫は変わることがあります。掲載額は買取価格を示すものではありません。購入時は対象型番の最新条件をご確認ください。

728と7281は、操作を支える構造にも注目する

2067の728と2057の7281は、いずれも自動巻きで、5Hz、60時間のパワーリザーブを備えます。5Hzはテンプが1秒に5往復する振動数で、毎時36,000振動という表記に対応します。一方、60時間は動力が続く時間。高振動であることだけを、その個体の日差や整備状態の保証に置き換えることはできません。

両機械に採用されるコラムホイールは、クロノグラフの作動を切り替える制御部品、垂直クラッチは計測側へ動力をつなぐ仕組みです。ボタン操作を受けて何を動かすかと、動力をどう伝えるかを分担しています。ブレゲは垂直クラッチを、計測開始時の針飛びを抑える設計として説明しています。公式・新型キャリバーの構造

製品別の公式仕様では、7281は339部品、728は350部品。2067に時間積算計があるように、文字盤の違いは内側の構成にもつながります。ただし、部品数が多い方があらゆる面で優れているという意味ではありません。二つの時計が何を表示するために作られたかを理解する補助になる数字です。

裏側では、面の仕上げと輪郭の仕上げを見分ける

両モデルのケースバックはサファイアクリスタルです。公式に紹介される仕上げには、部品の縁を斜めに削って磨く面取りと、小さな円を重ねるペルラージュなどがあります。外周の細い光と、平面に広がる模様を見分けると、「機械がきれい」という感想から、どこをどう整えているかの観察へ進めます。公式2057・仕上げの説明

時刻を読む表側が黒い文字盤と大きな数字を中心にまとめられているのに対し、裏側は部品の重なりと反射を楽しむ場所です。航空用クロノグラフの系譜を、実用品としての表示と、鑑賞する機械の両面から味わえるところに、現代のタイプ20/XXの面白さがあります。

42mmの直径だけで、着け心地を決めない

今回の2本はともに厚さ14.1mmです。直径だけを見て選ぶより、横からの厚み、袖口との収まり、手首の上での安定感まで試すと比較が具体的になります。また、2057ST/92/SW0はスティールブレスレット、2067ST/92/3WUはカーフストラップの仕様なので、重量感や腕への沿い方も同条件ではありません。

中古個体では、ブレスレットの余りコマ、ストラップやバックルの構成、クロノグラフの整備記録を確認したいところです。通常の時刻表示だけでなく、スタート・停止・帰零とフライバックの状態も販売店に確認すると、搭載機構に即した質問になります。防水の10barという製品仕様と、経年した個体の現在の防水状態も分けて考えます。

ナビタイマーの回転計算尺とクロノグラフを読むと、航空に関連する時計にも、計算用の目盛りと計測機能という別々の役割があることが分かります。

機械と表示の関係を広げるなら、エル・プリメロの400と3600の違いも参考になります。同じシリーズの中で、どの針が何を示すのかが変わる例を比較できます。

情報確認日:2026年10月4日。歴史・仕様・仕上げは本文中のブレゲ公式資料、価格はHASSINの商品ページを参照しています。比較対象は記載した2型番で、実機の使用・精度測定によるレビューではありません。