シードゥエラーは、長期間の水中作業を行うプロのダイバーを想定して生まれたロレックスです。大きな防水深度だけでなく、飽和潜水後の減圧で時計内部に生じる圧力差に対応する点が、設計を理解する鍵になります。
本稿では開発の背景、ヘリウム排出バルブ、ケースと機械の変化、現行2仕様を整理します。資料・公式掲載仕様の確認日:2026年10月5日(価格の確認日は価格欄に別記)。

深く潜るだけでなく、長く滞在するために
シードゥエラーの登場は1967年です。公式資料では当初の防水性能を610m、1978年からの防水性能を1,220mとしています。開発の背景には、海中居住施設などで長期間活動する潜水計画がありました。ロレックス・シードゥエラー概要
飽和潜水では、ダイバーは作業する深さに対応した圧力の居住環境で過ごし、ヘリウムを含む混合ガスを呼吸します。任務の最後には、時間をかけて減圧する段階があります。シードゥエラーは、水中の外圧に耐えることと、この減圧段階で時計を守ることの両方を考えた設計です。ロレックス・飽和潜水と開発の背景
これは時計の開発用途の説明です。文字盤の防水深度は時計の公称性能であり、人が潜れる深さや作業の安全限界を表す数字ではありません。
ヘリウム排出バルブは、何を逃がすのか
ヘリウムを含む高圧環境で長時間使用すると、時計内部へガスが入り込むことがあります。外側の圧力を下げる減圧段階では、内部の圧力が相対的に高くなり、風防などを損傷する原因になります。
シードゥエラーのヘリウム排出バルブは、内側の圧力が外側より高くなったときに自動で作動し、余分なヘリウムを外へ逃がします。潜水中に水を排出するための穴や、使用者が日常的に開閉するリューズとは役割が異なります。ロレックス・ヘリウム排出バルブの構造
「深い水圧に耐えるケース」と「減圧時の内部圧力を逃がすバルブ」を分けて考えると、なぜこの機構が必要になったのかが分かります。単に防水深度の数字を大きくするための装飾ではありません。
分を測るベゼルと、日を追うカレンダー
シードゥエラーには、短い経過時間と長い滞在期間を読む二つの表示があります。60分目盛りのベゼルは分針と組み合わせ、日付窓は日をまたぐ生活の目印になります。ロレックスは、数十日に及ぶ水中任務で日付の読みやすさが役立つと説明しています。2017年に加わった拡大レンズも、こうした長期滞在の視点から見ると意味がつながります。公式・サイクロップレンズの役割
ベゼルの読み方を、陸上での単純な例で考えます。10時10分にゼロの三角を分針へ合わせ、10時35分に分針が指すベゼルの数字を読めば、経過は25分です。時刻を表示する針とは別に、開始点だけを動かして差を読む仕組みです。秒針を始動・停止するクロノグラフのような操作は行いません。
逆回転防止は、この開始点が不用意に動く場合を考えた構造です。許された向きへ少しずれると、同じ分針位置でも経過時間は長い側へ表示されます。経過を短く見積もる方向へ回さない工夫であり、残りの空気量や減圧予定を計算する機能ではありません。上の例は表示の説明で、潜水手順を示すものではありません。公式・60分目盛りと逆回転防止ベゼル
コメックスとの関係と、世代の節目
ロレックスは1971年に、海中作業を専門とするコメックスとの協力関係を正式なものにしたと説明しています。時計を使う現場との結び付きは、シードゥエラーの歴史を特徴付けています。ロレックス・コメックスとの協力
| 年 | 主な節目 | 比較するときの意味 |
|---|---|---|
| 1967年 | シードゥエラー登場、公称610m防水 | 現行の防水数値を初代へ当てはめない |
| 1978年 | 公称1,220m防水へ | 同じモデル名でも耐圧設計が変化 |
| 2017年 | 40mmから43mmへ、3235を搭載、日付拡大レンズを追加 | ケース径・機械・風防をまとめて確認 |
2017年は誕生50周年の節目でした。公式のモデル史は、このときの赤いモデル名を初期モデルへの参照として説明しています。ただし、現代の赤い文字盤表記が、その時計を1960年代の個体にするわけではありません。ロレックス・2017年の新世代
この年表は全型番の移行表ではありません。写真の16600、ほかの40mm世代、現行43mmを調べる場合には、型番ごとの機械や風防、ベゼルの資料へ進む必要があります。
現行のスチールとイエローロレゾール
確認日時点の公式掲載例として、スチール製126600と、スチールにイエローゴールドを組み合わせる126603を比較します。いずれも43mmのケースと3235を搭載し、公称パワーリザーブは約70時間です。
| 比較項目 | m126600-0002 | m126603-0001 |
|---|---|---|
| ケース径 | 43mm | 43mm |
| 素材 | オイスタースチール | オイスタースチールとイエローゴールド |
| 公称防水 | 1,220m | 1,220m |
| 機械 | 3235、自動巻き | 3235、自動巻き |
| 公称パワーリザーブ | 約70時間 | 約70時間 |
| 日付拡大レンズ | あり | あり |
| ベゼル | 60分目盛り、逆回転防止、黒セラミック | 60分目盛り、逆回転防止、黒セラミック |
| ブレスレット | オイスター | オイスター |
| 長さの調整 | グライドロック | グライドロック |
126603のイエローロレゾールは、時計全体をゴールドで作った仕様ではありません。素材による外観の違いと、機械・防水性能などの共通点を分けると比較しやすくなります。ロレックス・126603の素材
逆回転防止ベゼルの目盛りは経過時間を読むためのものです。前回のスカイドゥエラーにある、設定する機能を選ぶリングコマンドとは用途が違います。スカイドゥエラーの記事
黒いセラミック、青い光、握りやすい縁
126600のベゼルは黒一色に見えますが、セラミックの本体と、目盛りの表面処理を分けて作られています。凹んだ数字・目盛りにはプラチナをPVDで薄く付けます。プラチナ製のベゼル全体という意味ではなく、黒い面との対比を生む部分です。表面の硬さだけを列挙するより、どこに何の素材が使われるかを見ると仕上げを理解できます。公式・126600のセラクロム仕様
文字盤では、三角・丸・長方形の時刻マーカーと形の異なる針が、向きと時刻を読む手がかりになります。暗所ではクロマライトの青い発光がそれを引き継ぎ、ベゼルのゼロにも発光部分があります。一方、ベゼル外周の刻みは手袋でつかむことを考えた形です。光で読む部分と指で扱う部分が、一つの輪にまとめられています。公式・視認性とベゼル外周
グライドロックを装着感から読む
ブレスレットのグライドロックは、公式説明では約2mm間隔の10段階で、合計約20mmの調整幅を持ちます。コマそのものを外して基本の長さを決める作業とは別に、留め具の中で長さを変える機構です。潜水服の上に着けるという開発用途が、腕との間隔を細かく整える仕組みにつながっています。公式・ブレスレットと調整幅
店頭で43mmケースを試すときも、直径だけで判断せず、長さを合わせた状態で手首を曲げ、時計が甲側へ寄りすぎないかを見たいところです。留め具のオイスターロックは不用意な開放を防ぐ役割、グライドロックは長さを整える役割です。同じ留め具周辺にある二つの名称を分けると、堅牢さと着け心地の設計が見えてきます。
仕様別の国内希望小売価格
価格確認日:2026年9月28日。ロレックス公式の日本向け価格情報で確認した税込額です。各リンクの末尾番号まで含めた仕様に対応します。
シードゥエラーの2素材に、本文で比較するサブマリーナー デイトを併記しています。サブマリーナーの行は別モデルの比較用です。防水数値のみで差額を評価せず、外装と使用目的を含めて比べてください。 公式掲載価格は、店頭在庫や購入機会、中古の成約額・買取額を保証するものではありません。
価格・在庫・受付条件は変わることがあります。購入や依頼の際は、対象の仕様と最新の支払総額をご確認ください。
サブマリーナー、ディープシーとどう違うか
ロレックスの潜水時計を比べるときは、同じ時点のモデルで条件をそろえる必要があります。以下は現行掲載の代表例による基本比較です。
| 対象 | ケース径 | 公称防水 | 設計を読む手がかり |
|---|---|---|---|
| サブマリーナー デイト126610LN | 41mm | 300m | 日付を備える潜水時計 |
| シードゥエラー126600 | 43mm | 1,220m | 飽和潜水とヘリウム排出バルブ |
| ロレックス ディープシー | 44mm | 3,900m | リングロックによる耐圧構造 |
出典:サブマリーナー デイトの仕様、シードゥエラーの仕様、ロレックス ディープシーの概要。
2008年に登場したロレックス ディープシーは、高い水圧を受け止めるリングロック構造を採用します。これはスカイドゥエラーのリングコマンドとは別の仕組みです。また、44mmのロレックス ディープシーと「ディープシー チャレンジ」を同じ仕様として扱わないようにします。ロレックス・ディープシーのケース構造
公称防水の大小だけで、装着感や日常での使いやすさまでは決まりません。ケース径、厚み、重量、ブレスレットの調整幅はそれぞれ別の比較項目です。本稿で厚み・重量の数値を確認していない仕様については、外観写真から推測していません。
シードゥエラーは、潜水時計の歴史を「どこまで深く」と「どのような環境に長く滞在するか」の二方向から読めるモデルです。旧個体では新品当時の公称性能と現在の状態も分け、型番・整備履歴・検査結果を確認することが基本になります。サブマリーナーの歴史


