ポルトギーゼは、大きく開けた文字盤とアラビア数字が印象に残るIWCのコレクションです。小さな表示が二つ並ぶモデルでも、それが経過時間を測るための表示なのか、時計に残った動力を示す表示なのかで役割は変わります。
この記事ではポルトギーゼの起源をたどり、クロノグラフのIW371604とオートマティック42のIW501705を比較します。見た目の共通点から入り、文字盤と機械を分けて読むと、それぞれの特徴をつかみやすくなります。
1939年の起源は、懐中時計用の機械にある
IWCの公式資料によると、1930年代末、ポルトガルの二人の商人が懐中時計の精度を備えた大きな腕時計を求めました。その要望に応えたRef.325は1939年に登場し、シリーズの背景には懐中時計用のキャリバー74と98があります。IWC公式・ポルトギーゼの歴史資料
この出発点を知ると、広い文字盤を単なる流行の大型化として見る必要がなくなります。機械をどのようなケースに収め、時刻をどう読みやすくするかという課題から、時計の形を理解できます。
ただし、現在のポルトギーゼすべてが懐中時計用ムーブメントを使っているわけではありません。歴史の説明と、目の前のリファレンスに搭載された機械の説明は分けてください。
1993年の記念モデルと、その後の展開
1993年、IWCは創業125周年に合わせてRef.5441を発表しました。公式資料は、この記念モデルをポルトギーゼの再出発として位置付けています。IWC公式・ポルトギーゼ資料(PDF)
クロノグラフについては、公式製品ページが1998年からの系譜を説明しています。1939年というシリーズの起源を、そのまま現在のクロノグラフの登場年と考えることはできません。IWC公式・IW371604
二つの小さな文字盤は、同じ仕事をしていない
IW371604は、通常の時刻表示に加えて分・秒単位の計測を行うクロノグラフです。普段の秒を示す小秒針と、計測に使う表示を区別して読みます。中央の長い針だけを見て、時計が動いているかどうかを判断しないことが大切です。
一方、IW501705は3時位置にパワーリザーブ表示、9時位置に小秒針を置き、日付も備えます。パワーリザーブ表示は、測り始めてからの経過時間ではなく、蓄えた動力の残量を知るためのものです。IWC公式・IW501705
小さな円の数が同じでも機能は異なります。写真を読むときは、円の位置だけでなく、周囲の数字、針の動き、ケース側面の操作ボタンを組み合わせて確認すると理解が進みます。
細いベゼルと段差が、文字盤の広さを生かす
ポルトギーゼ・クロノグラフは、細いベゼルの内側にアラビア数字と葉のような形の針を配し、上下の小さな表示に段差を設けています。平らな面に目盛りを詰め込むのではなく、時刻を読む面と小表示の奥行きが分かれる構成です。公式のRef.3716発表資料は、外周の4分の1秒目盛りも特徴として挙げています。IWC公式・文字盤の構成
観察するときは、最初に長短の針と数字、次に二つの小表示、最後に外周の細かい目盛りへ視線を移します。同じ文字盤の中に、日常の時刻を大きく読むための部分と、計測結果を細かく読むための部分が共存していると分かります。文字盤が広く見える印象と、ケースの実寸は別なので、41mmという直径だけから見え方を決めつけないことも大切です。
IW371604のシルバーメッキ文字盤に対し、IW501705は砂の色を連想させるデューン文字盤です。後者は左右の小表示と6時位置の日付によって、上下配置のクロノグラフとは視線の動きが変わります。色だけで選ぶ前に、日付、計測、残量のうち何を毎日見たいかを考えると、造形と機能を結び付けて比較できます。
型番をそろえて、ケースと機械を比較する
| 項目 | クロノグラフ | オートマティック42 |
|---|---|---|
| 比較対象 | IW371604 | IW501705 |
| ケース素材 | ステンレススティール | ステンレススティール |
| ケース径 | 41mm | 42.4mm |
| キャリバー | 69355 | 52011 |
| 巻き上げ | 自動巻き | 自動巻き |
| パワーリザーブ | 46時間 | 168時間(7日間) |
| 主な追加機能 | クロノグラフ | 日付・パワーリザーブ表示 |
| 防水表記 | 3bar | 5bar |
表は上記の公式製品ページに記載された二つの型番に限った比較です。「オートマティック42」という名称に対し、IW501705のケース径は仕様欄では42.4mmと記載されています。製品名の数字と実寸を区別すると、比較の精度が上がります。
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比較する型番の基準価格
価格確認日:2026年10月1日。本文で比較した型番について、日本向け公式情報の価格をまとめました。
| 型番・仕様 | 基準価格 | 区分と出典 |
|---|---|---|
| IW371604 41mm・シルバーメッキ文字盤・黒アリゲーター | 1,457,500円 (税込) | 日本向け公式掲載価格 価格の掲載元 |
| IW501705 42.4mm・デューン文字盤・黒アリゲーター | 2,304,500円 (税込) | 日本向け公式掲載価格 価格の掲載元 |
二つともスティールケースと革ストラップの仕様ですが、クロノグラフと7日間パワーリザーブの自動巻きという機能の違いがあります。価格差をケース径だけで判断せず、計測機能と動力残量表示のどちらを使いたいかも合わせて比較してください。
価格・納期・在庫は変わることがあります。掲載額は中古相場や買取価格ではありません。購入時は型番と付属するベルト、最新の販売条件をご確認ください。
外観が近くても、世代によって機械は変わる
IWCは2020年、Ref.3716のポルトギーゼ・クロノグラフについて、自社製キャリバー69355と透明な裏蓋の採用を発表しました。コラムホイールを使ったクロノグラフで、機構を裏側から観察できることも特徴です。IWC公式・Ref.3716の発表資料
したがって、外観が似ている中古品に現行ページの仕様をそのまま当てはめるのは避けたいところです。まず型番を確定し、次にキャリバー、裏蓋、表示機能を照合する順番が役立ちます。
46時間と168時間という差は、蓄えた動力で動く時間の違いです。168時間だから時刻の誤差が必ず小さいという意味ではありません。計測機能が必要なのか、長い駆動時間を重視するのかを分けて考えると、自分が注目する点を説明できます。
7日間の動力を、二つの香箱へ蓄える
オートマティック42の52011は、二つの香箱を備えています。香箱は動力源である主ぜんまいを収める部品で、公式はこの二つに168時間分の動力を蓄える構成を説明しています。文字盤のパワーリザーブ表示は、その長い駆動時間を日常の中で把握するための窓口です。IWC公式・52011と二つの香箱
たとえば複数の時計を交代で使う人なら、外している間も動き続ける長さに意味があります。ただし7日間という仕様は十分に巻かれた状態が前提です。着用した日数と蓄えられた動力は同じではないので、実際の残量を針で確かめられることに、この表示の使い道があります。
ペラトン式は、往復する動きを巻き上げへ変える
自動巻きのローターは、腕の動きによって両方向へ回ります。一方、ぜんまいを巻く側では動きを巻き上げ方向へ揃える必要があります。ペラトン式は、ローターの回転をカムと揺動する部品で往復運動へ変え、二つの爪を交互に働かせて巻き上げます。一方が歯車を送り、もう一方が戻るという役割を入れ替えることで、両方向の回転を利用する仕組みです。IWC公式・ペラトン式の動作解説
52011では巻き上げ機構にセラミック部品を採用しています。外装の色や光沢を楽しむ素材としてではなく、繰り返し動く接触部の摩耗への対策として読むと、素材選択の意味が具体的になります。機械全体がセラミック製という意味でも、整備が不要になるという意味でもありません。
裏側のローターを見るときは、装飾に加え、その動きがどこへ伝わるかにも注目してみてください。IW501705の公式仕様にある18Kゴールド製メダルはローターに配された部品であり、ローター全体が18Kゴールドであるとは記されていません。小さな素材表記にも対象となる場所があります。IWC公式・IW501705のローターと機能
径の差と、革ストラップでの収まりを合わせて見る
公式の現行仕様では、二本とも厚さは13mmです。直径は41mmと42.4mmですが、小径のクロノグラフがそのまま薄い時計になるわけではありません。大きく開いた文字盤、ケース側面、ラグから曲がるストラップまで含めて、手首の上での収まりを確かめます。IW371604のケース仕様とIW501705のケース仕様。
革ストラップは、長さと穴の位置、留め具が手首のどこに来るかで装着時の印象が変わります。購入時には正面だけでなく横からも見て、ケースが浮かないか、袖口に収まるかを確認したいところです。ここでの説明は試着時の観察点であり、実機の着用レビューではありません。
価格差は、使いたい機能と一緒に読む
今回の比較では、計測機能を持つクロノグラフより、7日間駆動のオートマティック42の公式価格が高くなっています。機能の数やケースの大きさだけでは、価格の序列は説明できません。測るための機構と、長い駆動時間・残量表示を備える機構という、設計上の違いを理解してから選びたい二本です。
メーカーの工程別原価はここでは確認していません。差額を香箱や仕上げ一つの費用へ割り当てることはせず、完成した時計の機能、外装、保証条件を合わせて比較します。中古品であれば整備履歴やストラップの交換費用も所有条件に加わります。公式新品価格から、将来の売却額を導くことはできません。
IWCの別の系統や、他社のクロノグラフと読み比べる
同じIWCでも、インヂュニアの歴史では耐磁時計という別の出発点を扱っています。ブランド名が共通でも、用途とケース設計の背景は異なります。
計測表示をさらに理解するなら、デイトナの計測表示と歴史も参考になります。形や知名度だけでなく、何をどの針で測る時計なのかを比べてみてください。
情報確認日:2026年10月1日。仕様は本文に記載した型番と参照ページに基づきます。
動力残量を文字盤で読む別の例は、マスター・コントロールのデイトとデイト・パワーリザーブの比較で紹介しています。

