ロレックス GMTマスターとGMTマスターII――時差を読む仕組みと、歴代モデルの変化

Rolex GMT-Master II; source identifies ref.116713LN ブランド・モデル
写真:Michael de Silva (bsodmike.com) / CC BY 3.0 / 出典・利用条件 / ライセンス。撮影年は製造年ではない。初代や現行比較3仕様ではなく、部品の当初仕様との一致は未鑑定。 加工記録:none

GMTマスターは、離れた地域の時刻を一つの時計で読むために生まれたロレックスのモデルです。24時間で一周する針と回転ベゼルが特徴ですが、初期のGMTマスターとGMTマスターIIでは、現地時刻を合わせる仕組みが異なります。

名前の「II」を、単なる外観の更新と考えると、この違いを見落とします。この記事では、旅のための表示と操作の基本から、ベゼル素材、機械、近年の仕様へ順にたどります。資料・公式掲載仕様の確認日:2026年10月8日(価格の確認日は価格欄に別記)。

黒い24時間ベゼルと緑色の24時間針を備えるGMTマスターIIの旧世代参考写真
写真:Michael de Silva(bsodmike.com)/Wikimedia Commons掲載元/CC BY 3.0。加工なし。掲載元はRef.116713LN、2008年9月3日撮影と説明しています。撮影年は製造年の証明ではありません。初代や下記の現行比較3仕様を示す写真ではなく、部品の当初仕様との一致も未鑑定です。

1955年、長距離移動のための時計として登場

GMTマスターは1955年に登場しました。ロレックスは、大陸をまたいで移動する仕事のための時計として説明し、パンアメリカン航空(パンナム)の公式時計となった歴史も紹介しています。ロレックス・GMTマスターIIの概要

出発地と到着地で時刻が異なる旅では、現地の時刻を知るだけでなく、自宅や仕事先が今何時なのかを知ることにも意味があります。通常の12時間表示に24時間の読み取りを加える構成は、その二つを結び付けるものでした。

ロレックスの2024年公式資料では、初期の代表例を次のように整理できます。

年 型番 系統と主な特徴
1955年 6542 GMTマスター。赤・青のプレキシガラス製ベゼルインサート
1959年 1675 GMTマスター。アルミニウム製インサートへ。リューズガードを追加
1982年 16760 GMTマスターII。時針を独立調整できる機械を採用

出典:ロレックス公式資料・GMTマスターII、5・7・9・36ページ。型番ごとの全仕様・全製造期間を示す表ではありません。

初期の素材名は、ここではメーカー資料の表記に合わせています。同じ型番でも、現在の個体に付いているベゼルや文字盤が発売当初のままかどうかは、交換履歴を含めて別に確認する必要があります。

GMTマスターとIIは、時針の合わせ方が違う

初期GMTマスターの通常の時針と24時間針は、同じ時刻を12時間制・24時間制で示す関係にありました。別の地域の時刻は、ベゼルを回して24時間針と目盛りの対応を変えることで読みます。

1982年のGMTマスターIIでは、通常の時針を他の針とは独立して調整できるようになりました。これにより、ベゼルを基準位置に保ったまま、通常の針で現地時刻、24時間針で基準時刻を示せます。ロレックス公式資料・機械の解説、23ページ

独立して動かすのは、通常の12時間の時針です。「24時間針だけを動かして現地時刻を合わせる」と取り違えないことが、IIの仕組みを理解する要点です。

現在の公式説明でも、リューズによる操作で時針を1時間ずつ前後に動かし、分針・秒針や24時間針を変えずに現地時刻へ合わせる機能が案内されています。ロレックス・GMT機能と表示

ベゼルを回すと、24時間針が読む地域を切り替えられる

ベゼルの三角を12時位置に置いた状態では、24時間針とベゼルの目盛りで基準時刻を読みます。ベゼルを回すと、同じ針に対応する目盛りが変わり、別の地域の時刻を読めます。ロレックス・二つの時間帯の読み取り

例えば、基準となる地域が10時、訪問先がそこから8時間遅れ、さらに別の地域が基準より3時間進んでいるとします。これは仕組みを説明するための仮の時差です。

状態 通常の時針で読む時刻 24時間針とベゼルで読む時刻
ベゼルを基準位置に置く 訪問先の2時 基準地域の10時
ベゼルを別地域の時差に合わせる 訪問先の2時 別地域の13時

ベゼルを回した後は、24時間針をベゼル目盛りで読む対象が切り替わります。三つの地域を扱えても、三つの独立した表示窓が常に並んでいるわけではありません。何を基準に設定したかを把握しておくと、読み違いを防げます。

実際の旅行では、日付の前後や夏時間を含め、その時点の時差を確認します。リューズ位置や時刻・日付の設定順序は、対象モデルの公式ユーザーガイドに従ってください。この記事の例は表示の考え方であり、全世代共通の操作手順ではありません。

日付は、現地時刻の時針と組になる

GMTマスターIIの日付は現地時刻に連動します。通常の時針で読む時刻と日付窓を一組にし、24時間針で読む基準時刻とは分けると、日付の異なる二つの地域も整理できます。ロレックス・現地時刻と日付の関係

例として、基準地域が10日の22時30分、現地がそこより3時間進んでいる場合を考えます。現地は11日の1時30分です。ベゼルを基準位置に置き、通常の針を現地時刻に合わせた状態なら、日付窓は11日、通常の時針は1時台、24時間針は基準地域の22時台を示す関係になります。時差は説明用の仮定で、特定都市の現在の時差を示したものではありません。

この例では分はどちらも30分で、通常の時針を3時間進めることで現地の表示を作れます。独立調整の単位が1時間であることは、旅先で分・秒を合わせ直さずに済む仕組みと結び付いています。ただし、半時間などの時差を同じ操作だけで表せるという意味ではありません。実際の設定は該当する型番の説明書に従ってください。

ベゼルは、色だけでなく素材も変わった

2005年、GMTマスターIIにロレックス初のセラミック製ベゼルインサートが登場します。当初の黒一色から、2013年には二色へ展開しました。ロレックス・GMTマスターの歩み

二色セラミックの最初の組み合わせは青・黒で、翌2014年には18 ctホワイトゴールド製モデルに赤・青が登場。2018年には茶・黒、2022年には緑・黒、2023年にはグレー・黒が加わりました。ロレックス・セラクロムの色展開

赤・青という組み合わせが共通でも、初期の樹脂、後年のアルミニウム、セラミックでは別の部品です。色の愛称だけで世代をまとめると、素材と構造の変化が見えにくくなります。

写真のRef.116713LNのように、旧世代には黒一色の外観もあります。GMTマスターIIの歴史を、現在目立つ二色ベゼルだけに限定しないことも大切です。

二色の境界は、昼夜の目安を表す

ロレックスは二色ベゼルの下半分を昼、上半分を夜の時間帯の象徴として説明しています。基準位置では24時間針が一日で一周し、昼夜を含む時刻を目盛り上で読み分けられます。これは配色による案内であり、現地の日の出・日の入りに合わせて境界が変わる表示ではありません。ロレックス・二色ベゼルの意味

ベゼルを回すと、色の境界も目盛りと一緒に動きます。別地域の時刻を読む際は「いま時計の上側にある色」だけで判断せず、24時間針が指す数値を確認するのが基本です。通常の時針と24時間針は一周に要する時間が違うため、文字盤上の同じ方向を指していても、同じ数値を読むとは限りません。

機械の節目――3085、3186、3285

GMTマスターIIの始まりを支えたのがキャリバー3085です。2005年には青いパラクロム・ヘアスプリングを備える3186が登場しました。ロレックス公式資料・23ページ

2018年には3285が登場し、同年にGMTマスターIIへ搭載されました。ロレックス・2025年発表の機械解説

現在のRef.126710BLNRの公式仕様では、3285は自動巻きで、パワーリザーブは約70時間。時計としての精度表示は、ケーシング後の日差−2〜+2秒です。これは公表された現行仕様で、古い型番や使用状態の異なる個体へそのまま当てはめる数値ではありません。ロレックス・126710BLNRの仕様

ここでは機械の主な節目を取り上げました。全機械・全型番の対応表ではなく、個々の時計の搭載機械は、その型番・製作時期に対応した資料で調べる必要があります。

セラミックは、ベゼルと文字盤で使い方が違う

2025年の126729VTNRでは、緑色のセラミック製円板を真鍮の板に取り付けて文字盤を構成します。公式資料は、ベゼルの緑の部分にも同種のセラミックを使い、色と光沢をそろえたと説明しています。文字盤まで含めて同系色に見えるのは、単に似た色を選んだという説明にとどまりません。ロレックス・セラクロム文字盤の構造

外周のベゼルインサートでは、成形されたくぼみの数字と目盛りにプラチナの薄膜を施しています。同じセラミックという素材名でも、内側は時刻表示の背景となる円板、外側は回転して読む24時間目盛りです。時計全体を一つの素材で説明せず、文字盤、ベゼルインサート、ケースの三つに分けると、このホワイトゴールド仕様の構成が理解しやすくなります。

近年の3仕様――左右の配置と文字盤も見比べる

次の表は、確認日に公式ページへ掲載されている3仕様です。GMTマスターIIの全ラインアップを網羅するものではありません。

型番・公式ページ識別表記 ケース/文字盤 ベゼルと配置 ブレスレット
126710BLNR/m126710blnr-0002 オイスタースチール/黒 青・黒。リューズ・日付は3時側 ジュビリー
126720VTNR/m126720vtnr-0001 オイスタースチール/黒 緑・黒。リューズ・日付は9時側 オイスター
126729VTNR/m126729vtnr-0001 18 ctホワイトゴールド/緑のセラミック 緑・黒。リューズ・日付は9時側 オイスター

出典:126710BLNR、126720VTNR、126729VTNR。いずれもケース径40mm、キャリバー3285、公式防水表記100m。新品時の設計仕様は、中古個体の現在の防水性能を証明するものではありません。

2022年の左リューズ仕様は、日付窓も9時位置へ移しています。2025年には、18 ctホワイトゴールド製の左リューズ仕様に、ロレックス初のセラミック製文字盤が加わりました。ロレックス・2025年の新作発表

この2025年の新しさは文字盤にあります。セラミック製のベゼルが初めて登場した年とは別です。また、同じ緑・黒のベゼルでも、上の二つのVTNRはケース素材と文字盤が異なります。

GMTマスターの歴史は、別地域の時刻を読む機能を、旅先で扱いやすくする変化としてたどれます。初代とIIの操作上の違いを押さえてから、型番、機械、素材、装着仕様へ進むと、それぞれの世代の特徴を整理できます。購入候補の状態・ブレスレット・保証を比べる際は、既存のGMTマスターIIの個体比較記事を参照してください。

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